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IDAS ネビュラブースターによるナローバンド撮影

2019年もいよいよお終いですね。
さて、今年取り組んだことの一つにネビュラブースターによるナローバンド撮影があります。
IDAS NB2-PMおよびNB3-PMの優れているところは、競合他社製品および同社NB1-PMと比べ、Hβをきちんとカットオフし、OⅢ輝線のみを通すところです。
この特性のおかげで、冷却CCDカメラの三色分解フィルターやカラーカメラと併用することで、単波長のみを取得し、輝線のみの単色像撮影を行うことが可能になります。

つまり、NB2&NB3-PMの特徴は、単純な光害カットのみではなく、ナローバンド撮影をカラーカメラで可能とする、まさに天体写真にとって、フィルターワークのゲームチェンジャーとなっているわけです。
M42NB-SAOs.jpg
オライオン30cmF4反射望遠鏡 TeleskopGPUコマコレクタ
QHY5III-178C カラーCMOSカメラ NB2-PM 3秒×140コマ、NB3-PM 3秒×350コマ

ちょっと処理に手こずり(風が強くてNG画像が多すぎて、目視選別しなければダメでした・・)、記事アップが大晦日になってしまいました ^^;

さて、前述のようにNB2&NB3-PMは星雲の単色像を得ることができます。
カラーカメラであれば、NB2-PMでは、ワンショットAOO撮影が、NB3-PMでは、OⅢとSⅡ画像を同時に記録することができます。
m42nb2-pms.jpg
NB2-PMですので、ワンショットAOO画像になります。
通常のモノクロカメラでの撮影では、Hα、OⅢを別途撮影する必要があるわけですが、NB2-PMとカラーカメラで撮影する場合、ワンショットでAOO撮影出来るため、非常に高効率でのナローバンド撮影が可能となっています。
この点でも、まさにフィルターワークのゲームチェンジャーと名打つだけのことがありますね。
m42nb3-pms.jpg
さすがにSⅡは強度が弱く、さすがに、やや苦しさは感じるものの、M42中心部のエッジ部分や鳥の頭の部分、翼のたもとの部分などに赤色が見られ、SⅡによる発光があることが判ります。

さて、NB2&NB3-PMでそれぞれ撮影したデータには、
NB2-PM 赤ch:Hα 緑ch:OⅢ 青ch:OⅢ
NB3-PM 赤ch:SⅡ  緑ch:OⅢ 青ch:OⅢ
の情報が強く含まれています。
したがって、それぞれのネビュラブースタで撮影した画像を、コンポジット処理まで行い、画像をRGB分解することで、各単波長画像を得ることができます。
NB-RGBSeparate.jpg
さしあたり、OⅢとSⅡを並べてみました。構造の違いから、きちんと単波長に分解されていることが判ります。
とりわけ、OⅢは、緑chと青chに含まれていることもあり、非常に高効率で撮影できることが判るかと思います。

今回はカラーCMOSカメラによるラッキーイメージングでの撮影ですが、もちろん、デジタル一眼カメラでも同様の結果を得ることができると思います。
また、通常では、APS-Cやフルサイズといった大判センサーであれば、ナローバンドフィルターも必然的に48mm以上の大きなフィルターが必要になり、これらのフィルターは大変高価です。
しかしながら、ネビュラブースターなら、2枚揃えれば、良く価格もナローバンドフィルタに比べれば低価格設定。リーズナブルにナローバンド撮影ができることも大きなメリットとなります。
M42NB-2PM-Ha-Sum32ss.jpg
GENESIS SDF屈折望遠鏡 ST8300M冷却CCDカメラにて撮像

星雲の独特な切れ味、上のランニングマン星雲の特徴的な形状から、Hα単色撮像ができていることが判ります。Φ36mmのナローバンドフィルタを3枚揃えるよりは、リーズナブルです。
ZWOのカメラは短フランジバックでΦ31mmでも4/3フォーマットはOkなので、悩ましいところですが、、、一つのカメラだけではなく、デジカメでの撮影でも使える等の汎用性の高さまで考えた上で選択されるのが宜しいかと思います。

厳密に言えば・・
最近の単板カラーセンサーでは、RGBの各波長の感光特性をオーバーラップさせる分光特性になっています。
ASI178MC QE
ZWO社 ASI178MCのグラフ

したがって、本当に厳密な意味でいえば、ネビュラブースターシリーズを用いても、単波長成分を取り出すことはできません。
たとえば、Hα輝線656nm付近では、緑画素でも、15%、青画素では7%くらいでしょうかね。。感光してしまいます。反対にOⅢ輝線では、赤画素でも5%程度感光してしまいます。(意外と青画素は相対感度50%程度で写りにくいのですね・・まあ、OⅢはどのみち、B+Gで上乗せしてしまうのでいいのですけど・・)
しかしながら、この程度であれば、十分に強度の差が出るので、上の方で、OⅢとSⅡを並べてた写真を見て頂ければ判りますように、構造の差は出せています。
ハッブルパレットを作画したことがある人には、三色分解・合成時に、若干、色が薄いかなという印象をもたれるかもしれません(画像処理で十分カバーできますが)。
ICX285AQ 
かつての私の愛機、SXV-H9CのICX285AQ カラーCCDイメージセンサの特性図です。
多少なりともオーバーラップはあります(やはりG画素でもHαが極若干は写ってしまう)が、IMX178に比べると、より純度の高い、単色像が得られることが解るかと思います。壊れてしまったのが残念です・・・(認識し難いのと、ノイズが入るくらいで使えなくはないのですが・・)
(2020/1/8 追記)

ただ、いずれにしても、単色像だ!と呈示したい場合には、やはりモノクロカメラ+三色分解フィルタで撮影する必要があるように思います。NB2-PMテストネビュラブースター NB2-PM+ST10XMEでの撮影例
左:NB2-PM+GフィルタによるOⅢ単色像 右:NB2-PM+RフィルタによるHα単色像

この場合は、フィルタ特性が完全にカットオフしているので、間違いなく単色像であると言い切れます。
ちなみに、ネビュラブースタは、通常のナローバンドフィルタに比べて、やや半値幅は広いのですが、十分な性能が出ているのがこの写真からも解りますね。また、自分が使った限りでの感想でいえば、通常のナローバンド系フィルタよりも、半値幅が広い分、星が写り易く、星の色が多分飛びやすいから?特にハッブルパレット合成は、やり易く感じています。(これはもう少し撮影しないとハッキリとは言えませんが・・)

少々余談も入りましたが、ネビュラブースター+単板カラーカメラの場合、RGB分解しても、厳密には単色光画像ではありません。
しかしながら、デジタル一眼カメラで、ハッブルパレットをやってみたい!という目的には十分使えそうです。
おまけにカラーカメラでは、極めて高効率でのナローバンド撮影が可能な上、光害にも強いので、遠征には行けないけれど、自宅から撮ってみるとか、月がちょっと大きいけれど、離隔のあるところを撮ってみようとか、遠征でノーフィルタ、自宅で、ネビュラブースターで輝線強調作品を融合して、ブーストかける、なんてな使い方もできそうです。
撮影の幅、表現の幅がぐっと広がることと思います。
従来の天体写真スタイルにプラスする方向で使うこともできる、まさにフィルターワークのゲームチェンジャーと云うに相応しいのではないでしょうか。

さて、今年も残すところあと僅か。
良いお年を。
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コメント

No title

明快な考察に基づく解説、いつも楽しみにしています。こちらは、ようやく色々な基礎事項が分かりかけてきたところに過ぎませんが、来年もお付き合いください。

それではよいお年を!!

No title

面白い記事ありがとうございます。
自分はNB-1フィルターなのでOⅢ領域が20nmほどあるためナローとは言えない帯域幅があります。ただ、冷却CCDカメラのGフィルタを使うことで約2/3位帯域をカットしてくれるので、冷却CCDカメラを使うならNB-2に買い換えなくても良いかな....。ただ、NB-1のようなデュアルバンドフィルターはデジカメなどのカラーカメラで一発撮影出来ることに意味があるように思います。NB-2に買い換えた方が良さそうですね。

Re: No title

> あぷらなーとさん、おはようございます。

こちらこそ、あぷらなーとさんの記事、いつも楽しみにしています。
今年も宜しくお願い致します!

Re: No title

> のんたさん、おはようございます。

NB2も、OⅢで19nm、Hαで21nmで半値幅としては、市販されているナローバンドフィルタの3~2倍ほど広いのですが、特にOⅢは495nmと500nmのダブルラインがありますので、これを双方とも高い透過率で通しているため、特にOⅢでは6~7nmモノに比べて効率も良く不利益を感じませんでした。
同様の考えで、AstronomikOⅢ(12nm)を所持しているのですが、厚みの関係からピント合わせ直さないといけないなど、運用上の制約が大きいので、NB2-PMでの撮影が増えるかも。

Hαはもともとの輝線が強いのもあって、この半値幅でも月夜でも十分使える上、半値幅が広い→星が写り易いので、Hα-RGB合成などはやり易いです(まあ、技術がある人にとってはこの点は大した問題ではないですが・・)

NB1との最大の違いはHβの扱い。これを通してしまうと、ナローバンド代用には全くならなくなるので、カラーカメラでハッブルパレットとかができなくなります(もちろん、HβとOⅢでは輝線強度はOⅢが強いので、全くできない訳では有りませんが・・それこそ、何を撮ったのか狙いが判らなくなってしまうといいますか、、、意味がなくなってしまうといいますか・・)

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プロフィール

UTO

Author:UTO
子供の頃、図鑑で見たパロマー天文台の天体写真に憧れて、天体写真を初めて幾星霜・・
デジタルカメラの進歩によって、当時のパロマ天文台の写真を超える天体写真がアマチュアでも撮れる時代になりました。

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