FC2ブログ

記事一覧

CMOSカメラ ASI 120MMによるM27

土曜日、観望会の後の話になります。
透明度は最悪な状況でしたが、晴れ間はあったので、GENTAさんからお借りした、CMOSビデオカメラ、ASI 120MMの撮影を敢行してみました。
まあ、途中で曇ってしまったので、目覚まし時計で起きてきた時に見たら、丼曇りでしたが・・ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!
でも、所定の枚数は撮影できたみたいです。

ASI120MMは、超高感度のCMOSイメージセンサを搭載したモノクロCMOSカメラです。
作例の前に、ちょっとだけ、CMOSイメージセンサについて説明します。

CCDにしても、CMOSにしても、光を感じる部分は、フォトダイオードです。
読み出し方の違いで、バケツリレーの様に運び出す転送路があるのがCCD(狭義では転送路のみを指す)
スイッチングによって各画素を読みだしていくのがCMOSイメージセンサです。
CCDは専用の製造ラインが必要になりますが、CMOSイメージセンサは一般的なDRAMなど汎用ラインでの生産も可能であり、比較的安価に製造できるメリットがあります。
したがって、10年程前まではトイデジカメや、カメラ付きケータイのセンサとして多数採用されていました。

一方で画質は、CMOSの読み出し時のスイッチングノイズが乗ること、画素内の配線で光を感じるフォトダイオードが遮られる(開口率が低いと言います)ことなどの問題点も多々あり、画質ではCCDが上と長らく言われてきました。

転換点は、やっぱりなんといっても、Canonが一眼レフデジタルカメラ用にAPS-Cサイズの大判センサを作成したことでしょう。1画素あたりの面積が大きければ、CMOSの1画素内部の配線やトランジスタなどがあっても、フォトダイオードは十分に光を感じることができ、画質も維持できます。

むしろ、低消費電流、さらに高速で動作させるにはCMOSイメージセンサの方がCCDに比べ有利であったこともあり、2007年頃には、デジタル一眼レフカメラのイメージセンサについては、CCDかCMOSかの大勢は決したと言えると思います。

映像エンジンが入るデジタルカメラについては、早めにCMOSイメージセンサが定着していきました。その進化と無関係ではないのでしょう。それまでトイデジカメなどでしか使われてこなかったチップサイズの小さなCMOSイメージセンサも画質をどんどんあげてきて、外観検査機などで使う工業用CMOSカメラもちょくちょくと出て来ました。

この頃から、ちょうど、AstroSnapやPHDといった、フリーのガイドソフトが出てきたのもあり、ボクも2006年頃に、PL-130MというCMOSカメラを購入してみました。
ガイドカメラ用途よりも、CCDビデオカメラ用途として、月面撮影に使えないか?というのがひとつの目論見でした。それと、このカメラのイメージセンサはMicron社のものだったと思いましたが、QEが高めで60%程度あったのも魅力的に写ったものです・・

ところが、このCMOSカメラで撮影したところ、なんかオカシイ・・・
暗い部分は全てカットオフされてしまいました(上の写真は撮影した月面像を2Dグラフでラインプロファイル切ったもの)
つまり、ある一定の輝度以下は映像情報がバッサリと切り捨てられてしまうんです。

なぜか?というと、旧世代のあるCMOSイメージセンサの画像をお見せしますが、ご覧の通り、縦スジ、白点など見られたものではないですね。
これらを見せない為に、カットオフしていたのでしょう・・。ガイドカメラなら、それはそれでアリですしね・・(;゚Д゚)

すみません、前置きが長くなってしまいました。
最近では、sCMOSと呼ばれる科学計測用CMOSセンサも出てきてCMOSイメージセンサが躍進し始めています。従来のCCDイメージセンサよりも利点としては、高速性(ハイフレームレート 30fps以上)、高画素、低読み出しノイズがウリの様で、これらは、オンチップないし、フロントエンドで、上述した、縦スジ、白点といったCMOSセンサのノイズを補正して、映像を出力してくれる為、かつてのCMOSイメージセンサに比べて大幅に改善されてきました。

さて、では、肝心のASI120MMの画像はどうだったでしょうか?
ASI120MMのダークフレーム 4秒露光(32枚平均)

CMOSらしい、縦スジに加え、わずか4秒ですが、白点ノイズが多いですね。
でも、これでも、内部で補正されていると思います。もともとCMOSイメージセンサというのは長秒露光には弱いのです。もっと短時間露光で撮影すれば、きちんと補正された美しい映像になると思います。

亜鈴状星雲 M27 オライオン30cmF4反射望遠鏡 4秒=0.25 fps 1枚 

とはいえ、冷却CCDカメラなら、まるで数分も露出したかのようなダークノイズで、正直、う゛っ・・これはやっぱりまだまだ天体写真では実用にならないかも・・・とこの時は思いました。
一応、8秒露光でも撮影してみましたが、ダークノイズが増えるばかりで、星雲の肝心のS/Nは上がってなさげ・・・やはり、CMOSで長秒露出は無理があるなぁ・・。
こうしてみるとデジタル一眼レフカメラのセンサは、非常に良く出来てますよね。多分、長秒露光時の補正パターンファイルも内部で持っているんじゃないかと思います。

いずれにしても、デジタル一眼レフカメラで天体写真を楽しんでいる人にとっては、意外な方が多いかとは思いますが、CMOSイメージセンサでは露出をなるべく切り詰めて撮影した方が良い結果になります。
少なくとも、このカメラでは。(もっとも、自分が知っているその他のCMOSカメラでも長秒露光はあまり得策ではありませんが・・)

ここまで見て、こりゃ、CMOSカメラはダメかぁ~と思われた方もいるかもしれませんが、ちょっと待った!
亜鈴状星雲 M27 オライオン30cmF4反射望遠鏡 4秒=0.25 fps 1枚 ダーク減算あり

ダーク減算してみると・・・
たったの4秒1枚画像でも、亜鈴状星雲の割と淡い部分までしっかりと写っています!!
さすが、QEが75%近くあるだけのことはありそうです。
ダークを引くと綺麗な天体画像が浮かび上がる・・・なんだか、昔使っていたCV-04L冷却CCDカメラを思い出してしまいましたヨ・・(^^ゞ

これは、ひょっとしたら、ひょっとするかも・・?
と、いうわけで、仕上げてみました。

亜鈴状星雲 M27 オライオン30cmF4反射望遠鏡 4秒×716コマ Drizzleコンポジット

撮像した1024コマのうち、70%良像を使うように設定して、DeepSkyStackerでDrizzleコンポジット。
どうでしょ?思った以上にしっかりと写ってくれていたと思います。

ただ、透明度が最悪だったからかもしれませんが、個人的な目的にはもう一歩、画質が足りないかな・・
お得意のDeconvolutionは今回、実行できるだけの画質がありませんでした。
機会があれば(まだお借りしていても良ければ ^^;)、もう少し条件が良い時に再撮影してみたいと思います。

カラーはスミマセンが、過去の冷却CCDカメラ画像からLRGB合成しました。
星像が変なのは、光軸のせいもありそうですが、1枚画像から考えると、それだけではないようで、スタック時の問題もありそうですね、、、(゚-゚;)ウーン
それはそれとして、1/3インチの小さなセンサでも、これはコマコレクターが欲しいかもしれません。

それにしても、わずか4秒露光で、これほどまで写っているとは思ってもいませんでした。
もう少し露出を切り詰めた方が得策な面もあるし(これはCMOSカメラの特徴ですね)、M27よりより明るい被写体によってはさらに良像を得ることができる可能性も高いんじゃないかなと思います。

ところで、CMOSイメージセンサには、画像を一発で読み取るグローバルシャッターと、1画素ずつ読み出していくローリングシャッターと呼ばれる方式に大別されます。
グローバルシャッタ方式の方が、スチルにも動画にも向いているのですが、今のところ、デジタル一眼レフカメラでは、グローバルシャッターの採用例はありません(近い将来、出てくるでしょう)。工業用CMOSカメラではグローバルシャッターのものもありますが、グローバルシャッターにすると、1画素内のトランジスタ数が増えてしまい、フォトダイオードの遮蔽率が高くなってしまうため、QE(=感度)はかなり落ち込んでしまうこともあり、画質を問われるデジカメ用途にはまだ採用されていないようです。
ASI120MMのセンサも、グローバルシャッターではなく、ローリングシャッターです。
ローリングシャッターの弊害としては、動いている被写体を撮ると読み出しで歪んで見えるコンニャク現象が知られています。
あとは、デジカメで問題になることはまずありえませんが、この種のCMOSビデオカメラで、ハイフレームレートで撮影した場合には、ちょっと気になる現象も生じてきます。
蛍光灯のフリッカー

蛍光灯は交流電源で動いていますから、当然、60Hzないし50Hzの周期で明滅しています。
CCDビデオカメラなら、画面が明るくなったり、暗くなったり明滅する様子が捉えられるのですが、読み出しが一括でないCMOSビデオカメラでは、ご覧の様にしましま模様が出てしまいます ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!

もっとも、これは蛍光灯が周期的に明滅して(つまり動くというか、変化して)いるからです。
天体写真では、惑星写真にしても、星雲写真にしても基本的にスチルですし、そもそも天体が動くわけではないので、ローリングシャッターの弊害は基本的には無い。・・ハズです。
シンチレーションで大きく揺らいだ時や、赤道儀の追尾が悪くて動いていっていたりすると、ちょっと心配なんですよね・・・
ミュートンさんの土星画像の僅かな斜めブレがちょっとばかり気になったのでした。
もしかしたら、ローリングシャッターのせいかも・・???いや、でも、まさかねぇ・・

結論としては、ASI120MMは、星雲撮影にも十分、実用になりそうで、いろいろと楽しめるカメラでした。
この手のCMOSカメラも5年前から大きく進歩しているんですねぇ・・
ただ、まだ長秒時のノイズが大きいので、この点も、デジカメ同様に改善されていくと、さらに天文向きになると思います。(CMOSイメージセンサの多くの用途からすると、残念ながら早晩に解決するとも思えませんが・・・)


関連記事
スポンサーサイト



コメント

No title

おぉ、UTOマジックですね。>M27。どんな素材でも料理できちゃう。
私なら、即、捨てちゃうかも。ただ、1/3インチと言うのも、ちょっと。当面は、SSAG(StarShoot)で、我慢しようかな。せめてSSAGがBININGできると良いんだけど、できないのが残念。

No title

ひょつとしたらひょっとしちゃいましたね~。
あのカメラでM27がここまで写るとは驚きました。CMOSの解説もとても分かり易くて参考になりました。

No title

このカメラの片鱗がわかるレポートありがとうございます。
まだまだCMOSより天体にはCCD方式の方がよいと思いました?

No title

観望会の後、ちょっとCMOSカメラで撮影してみます。と言われたときには、えっ、この空で・・・と思いましたが、結構写るものなのですね。テストありがとうございます。
CMOSとCCDの違いの解説付きで為になりました。

カメラは、もう1台のCostarと共に、もう少しテストをお願いします。

No title

おっ、噂のカメラですね。
感度だけ高くてもノイズまではわからないものですね。でもSSAGやQHY5クローンあたりとくらべると、4秒でこれなら立派なものかなって気がします。何しろ夏の非冷却ニワトリですしね。

No title

とても判り解説と実際の撮影結果での検証で、すごく勉強になりました。このカメラ最近買ったばかりで、接続確認をしただけですので、課題を明確にしていただきすごく助かります。
主に惑星撮影につかうつもりですが、それでもダークは引いたほうが良いのか検証して見たいと思います。

No title

このカメラすごく気になっていました。
作例を見ると
http://www.zwoptical.com/Eng/Galleries/ASI120.asp
すごいのばかりでほんとかいな、、などと思いながらも、この値段なら。。。などと考えておりましたが、まんざら嘘でもなさそうですね。
さすがUTOさんの真骨頂。今度は作例にあるような銀河もお願いします。
ローリングシャッターはiPhoneカメラでプロペラ撮影したらエライことになった例が有名ですよね。

No title

CMOSのWebCamでも、星雲がこれほど美しく写るとは、驚き!目から鱗です。
まあ、仕上がりの良さはUTOさんだからかも。
以前は欠点が多かったCMOSでも、惑星撮影に使い始めている方も居られるので、
これからが楽しみですね。
DMKでの星雲・星団撮影が上手く出来る様になったら、CMOSの大きめのを考えようと思っています。

No title

1枚当たり4秒ってところもスゴイのですが、星つぶが小さくて、かなり接近した微光星もしっかり分解できているところに目が行ってしまいます。思わず自分の写真と比べて見ましたが全くかないません。パラコアはかなり優秀と思っていますが、それでも中心像は悪くなっているってことがよく分かりました。だからと言って、対象に応じて光学系を変えるマメさはないので外せないんですけどね。

No title

階段男さん、こんにちは~
いやー、元画像見た時は8bitだし、これはチョットダメっぽ・・(´・ω・`)
と思ったのですが、ダーク引いてあげてコンポジットしてあげたら見違えました。

CMOSカメラはまだまだこれから進歩が見込めますので、確かに、ガイドカメラでSSAGをお持ちなら、もう少し様子見で良いかなーと思います。

CMOSだと、ビニング読み出しって出来ないんですよ。ASIのは2×2設定もありますが、これって、デジタルビニング、、つまり、後処理でソフトウエアビニングしたのと全く同じです(SNは√2倍にしかならない)
ただ、CMOSでは、なんていうんだろう?画素を飛ばして読み出しすることもできるので、高速スキャン(・・・たぶん)の意味で2×2ビニングなども設けているのかも。

No title

シュミットさん、こんにちは~
CMOSは読み出しノイズが低いこともあって、ダーク減算さえしっかりすれば、ちゃんとデータがあって、コンポジットすると見違えてきて驚きました。

CMOSセンサは、デジタル一眼レフなら当たり前になりましたが、この種のカメラだと、多少?まだクセがあるので、上手く使う方法をこちで考えてあげないといけないかもしれませんね。

No title

NGCさん、こんにちは。
鋭いですね!!正直なところ、まだまだSony製CCDの方が・・という印象です。
ただ、暗電流ノイズが問題なだけで、恐らく1秒以下に設定できれば・・(゚A゚;)ゴクリ
あとは、CMOSもAptinaよりもSonyの方が一日の長がありそうです。

No title

GENTAさん、こんにちは。
いやー、面白いカメラをお貸ししてくださって、ありがとうございますm(__)m
昨晩も晴れたので、どうしようか悩みつつ、三色分解フィルターを通して、このCMOSカメラで撮影してみました。
結果は、処理してみなければなんとも言えませんが・・・
今のところ、フィルターワークはキッツイかなぁー・・って印象です。
あと、前回、月明かりと悪透明度で背景が明るかったので問題にならなかった感じですが、Gainを調整しないと映像信号が埋もれてしまってダメかも、、です。
一応、問題ない範囲で調整したつもりですが、昨晩の撮影は失敗だったかも、、
あー・・ヒストグラム切れた状態で撮像続行してしまった、、こりゃエンジニア失格ですね、、

No title

かわうさん、こんにちは。
やっぱりカタログスペックだけでなく、実際に撮影してみるのが大事ですよね。
一応、暗電流ノイズ、リードノイズ等から類推はできるのですが、CMOSカメラは特にクセがあるし・・・実際に使ってみてどうかがやっぱり一番大事かなって気がします。
SSAGよりは感度は高そうな印象ですが、Corstarもお借りしているので、そのうち比較テストなどもやれたら面白いかも。
もっと晴れてくれれば良いのですが・・・(゚-゚;)ウーン

No title

いーぐるさん、こんにちは。
おおっと、なんと、このカメラも買われていたのですね!!
ミュートンさんも奨めてたしなぁ、、(^^ゞ

短時間露光では、保持しているパターンデータとマッチするので、問題ないと思いますよ。ダーク無しで。
1秒以下で撮影できるのが一番いいかなぁーって印象です。

伸ばせば暗電流ノイズが増えて、とたんに画質が劣化してくるのがCMOSカメラの特徴だと思います。短時間露光多数枚が得意だと思います。デジ一は反対に適正露出が大事ですが・・。設計思想の違いが見えて、結構楽しいです。

No title

とれじゃさん、こんにちは。
M82は特に凄いですよね。
春頃にまたGENTAさんにお借りして狙ってみたくなってきます。

そうそう!iPhoneのプロペラは有名ですね!
ローリングシャッターで不思議な物体になっちゃう・・
天体写真だと基本的には問題はないハズですが、移動していくISSなどの追跡は先ず無理。星食もちょっと心配かも・・?あれくらいなら問題ないかなー・・
画素の最初と最後で1フレーム分(露光時間分)の遅れが出るのがCMOSカメラです。

No title

ヨネヤンさん、こんにちは~
CMOSカメラも、ずいぶんと良くなってきました!
まだちょっとクセが強いかなぁーと思いますが、初期の冷却CCDカメラやNABGカメラの頃の様に工夫すればなんとかなるレベルかなーって感じです。
もちろん、短時間露光の惑星写真なら、全く問題なく撮影できると思います。
月面も撮ってみようかなと思ったら、考えてみたら、月も小さくなってましたね、、いい加減晴れてほしいッス。

No title

g-logさん、こんにちは。
近接した微光星・・全く目が行ってませんでした Σ(゚д゚|||)
構造描写だけみて、うーむ、もう一歩かなぁーとも思ってましたが、確かに画素が細かいからでしょうね、微光星の分離はかなりのものの気がします。
パラコア2は自分もシャープだと思っていますが、このカメラでテストしてみたところ、やはり弱化のニジミ(鈍り)は感じました。
あと、高精細すぎて、やはりDeconvolutionが難しい・・Kobe1995さんが何時だったかコメントくれたのですが、もっと光を!!そんな感じです。
やはり画素サイズと感度と解像力はトレードオフの関係があるので、5μないし6μクラスが天文用としては良いのかもしれませんね。
本当は、高精細画素に対応できる撮影技術と処理技術があれば、さらにこのカメラの性能を引き出せるのでしょうが・・

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

UTO

Author:UTO
子供の頃、図鑑で見たパロマー天文台の天体写真に憧れて、天体写真を初めて幾星霜・・
デジタルカメラの進歩によって、当時のパロマ天文台の写真を超える天体写真がアマチュアでも撮れる時代になりました。

月別アーカイブ